2012年8月15日水曜日

6年と7日

蝉のギィギィ鳴く声で目が覚めた。
もがき苦しむような羽音。
尋常ではない。

眠い目をこすりながら窓の外を見る。
厚い雲に覆われた空。
雲間から陽が射している。
いつもと変わらない朝の風景。

が、
視線を二階の窓の高さに落とすと。



6年間も暗い土の中で過ごし、
煌びやかな世の中で最後の7日間。
網に捕まらなくても長い命ではない。
蝉が地上で鳴くのは雄だけ。
雄は最後の7日間を
雌へのラブコールとして必死に鳴き続ける。

彼には為すすべがないのだろう。
左右の羽先を見事にキャッチされている。
この巣の住人は見当たらない。
ジッと獲物の動きが止まるまでなりを潜めているのか。



せめてもの救いは仕事から帰ると
彼の姿が見えなかったことだ。

きっと仲間が助けてくれたのさ。

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